最高裁判所第二小法廷 昭和62年(オ)444号 判決
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人らの負担とする。
理由
上告人益田芳夫の上告代理人石崎泰男の上告理由第一点の一について
区分所有者の全員又は管理組合法人が建物の区分所有等に関する法律六〇条一項に基づき、占有者が占有する専有部分の使用又は収益を目的とする契約の解除及びその専有部分の引渡しを請求する訴えを提起する前提として、集会の決議をするには、同条二項によつて準用される同法五八条三項によりあらかじめ当該占有者に対して弁明する機会を与えれば足り、当該占有者に対し右契約に基づき右専有部分の使用、収益をさせている区分所有者に対して弁明する機会を与えることを要しないというべきである。これと同旨の原審の判断は、正当として是認することができる。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。
同第二点ないし第四点について
所論の点に関する原審の事実認定は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、右事実関係のもとにおいては、区分所有建物である原判示の本件建物のうちの本件専有部分の賃借人である上告人益田は、本件建物の使用に関し同法六条三項によつて準用される同条一項所定の区分所有者の共同の利益に反する行為をしたものであり、かつ将来もこれをするおそれがあつて、右行為による区分所有者の共同生活上の障害が著しく、他の方法によつてはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者と共同生活の維持を図ることが困難であるときに該当するとした原審の判断は、正当として是認することができる。原判決に所論の違法はなく、右違法のあることを前提とする所論違憲の主張は前提を欠く。論旨は、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するか、又は原審の認定にそわない事実若しくは独自の見解に基づいて原判決の違法をいうものであつて、採用することができない。
その余の上告理由について
所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、ひつきよう、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するか、又は独自の見解に基づいて原判決の違法をいうものにすぎず、採用することができない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 牧 圭次 裁判官 島谷六郎 裁判官 藤島 昭 裁判官 香川保一 裁判官 林 藤之輔)